2025/07/16 00:00

タニシインフォメーション vol.291 2024年2月号掲載

群れで生活するニュウナイスズメ


ニュウナイスズメ 雌
 ニュウナイスズメは秋の終わりころ群れでやってくる。スズメが多いなと思って近づいてみるとちょっと様子が違う。よく観ると体形がスズメよりスマートで色も明るい茶褐色をしたニュウナイスズメだ。スズメには頬に黒斑があるがニュウナイスズメにはない。これが識別のポイントだ。

 東広島市西条町のショージ下見店の東を通る道路の東側の休耕田に、セイタカアワダチソウの茂みがある。その中に毎年ニュウナイスズメがやってくる。チイー、チイー、チイーと騒がしく声がする。あたりは騒がしくざわついていて、あちこちでニュウナイスズメが浮き上がり、すぐに草の中に隠れる。この田んぼ一面がニュウナイスズメに占領されて賑やかだ。

 ニュウナイスズメは本州中部以北の主に山地の落葉広葉樹林で繁殖し、秋は関東以西の暖かい平地へ移動し、水田地帯や川原などに数十~数百の群れで生活する。日本内を季節によって移動する鳥であり、このような鳥は漂鳥と呼ばれている。しかし、東広島から見れば冬鳥でもある。

 ニュウナイスズメの雌にも頬に黒斑がない。しかし、雌には目の上に眉斑が目立つ。頭から背中にかけてオリーブ灰色をしている。雌も雄も下面は白く薄汚れている。

 遠路はるばる中部地方以北からやって来て、この地で冬を過ごすニュウナイスズメの集団はまれである。東広島の西条町下見の休耕田を選んでくれたことを嬉しく思いながら、スズメより騒々しく、騒ぎながら暮らす彼らをいつまでも眺めていると、時の過ぎるのを忘れてしまいそうだ。


文・写真:理学博士 新名俊夫
2024年1月 記

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